我傍的、ここだけの話


Category小説【試し読み】 1/1

試し読みで短編小説をUPしました。ご案内と作者呟き

オンライン小説を読むという文化がなくなってしまった昨今。(「異世界ファンタジー」というジャンル以外)サイトに置いておくのも無意味と感じまして、試し読みのために短編小説をここへ掲載することにしました。と言っても稚拙な小説のため、掲載することでかえって不利となるかもしれませんが。笑あくまでも事実の体験を書くことしか能のない素人の駄文として、温かい目で読んでくださると幸いです。――以下二作品は現代小説、仄...

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高楼想話 解説

この小説は拙著『我傍に立つ』のオリジナルイメージがベースの小説です。『我傍に立つ』は歴史記録を拠り所とした架空小説ですが、今回は記録を素材とした割合が多くなったので、現実名への書き換えが可能かと思い挑戦してみました。解説追記:実は、『我傍に立つ』での設定があまりにもだったためずっと心残りで、この番外編を執筆したものです。あくまでもフィクションなのですが、こうだったらいいなという願いで書きました。な...

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高楼想話(六)

これは小説です。2009年筆高楼想話(六)「英珠、君は死んだ」 赤壁戦から時が過ぎたその日、仰臥する青年に私は語りかけた。「君の葬礼も済んだ……、劉綺の人生は終わったのだよ。だから心安らかになっていい。もう何も、君の心を煩わせることはない」 眠る青年の頬は血の気を失い青ざめていたが、穏やかだった。 閉じられた瞼へ落ちる睫毛の影は濃く深い。 と、その影が揺れた。 微かに開かれた瞼の隙間から輝く瞳が私を見つ...

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高楼想話(五)

これは小説です。2009年筆。高楼想話(五) 夏、劉表が死んだ。 父危篤の知らせを聞いた英珠はすぐさま馬を飛ばした……、しかし英珠が城へ入ることは許されなかった。 ついに英珠は親の死に目に会えず、葬式にさえ並ぶことが出来なかった。 堅く閉ざされた城門の前で英珠は地を叩いて嘆き、号泣したという。 この話を後で聞いて私は胸が潰れる想いだった。 恩、などと周りは簡単に言う。 “逃げろ”と背中を押した私が良いこと...

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高楼想話(四)

これは小説です。2009年筆。高楼想話(四) その後、私は劉表の邸へ行くことを控えた。 邸で英珠と会って親しげな表情でも見せてしまい、英珠と私との関わりを家人に悟られたら危険だからだ。私に相談したことが露見して英珠が命をおびやかされ、主人へ火の粉が飛ぶことは私には耐え難い。 邸へ行かない理由を、それまでの経緯も含めて全て正直に告白すると、主人は「お前なあ。情に弱いのも大概にしろよ」 とさすがに眉根を寄...

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高楼想話(三)

これは小説です。2009年筆高楼想話(三) 逃げろ! 逃げて、生きろ! 拒絶されるかもしれないと思った。 家から逃げる。それは残酷な行動だ。本人にとっても家族にとってもこの世で最も辛い裏切りであり、別れだ。その残酷を受け入れることは多くの人にとって難しい。 私は祈る気持ちで彼の心に訴えかけた。 頼む、聞き入れてくれ。これしか道はないのだ。 何故だろう。今、目の前の人を救いたいと必死で思った。この人に自...

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高楼想話(二)

これは小説です。2009年筆高楼想話(二) 酒に釣られたわけではない。 しかし、その酒は美味だった。 水のように澄んでおり、口に含むとほのかな果実の甘みが広がり、次いで花の香りが漂う。なるほどこんな酒ならば、“神の水”と呼んでいい。酒と言えば黄色く濁り強い匂いを放つものと思っていた。このような上品な香りを抱く水の存在を、私は伝説でしか聞いたことがない。 酒はあまり詳しいほうではない。この若さではまだろく...

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高楼想話(一)

これは小説です。2009年筆。【注記】・劉キの「キ(王+奇)」は機種依存文字のため「綺」に変えています。・劉キの字、「英(えん)珠(しゅ)」は作者の創作です。 高楼想話(一) 先生、先生と声がするので、周りを見回すと木陰から白い顔が覗いた。「英珠(えんしゅ)」「先生、お話が」 頬を紅く染めてこちらを真摯に見つめる顔はまだ少年のようだった。 劉綺(りゅうき)――字(あざな)を英珠――はこの頃、確か二十歳になったばかり...

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空蝉 -utusemi-

これは小説です。執筆2007年12月15日 2008年2月2日改稿 『rainy days』掲載 空蝉 -utusemi- いつも背中ばかり見せて済まない、と思う。 読み止しの文庫を机に伏せ、傍らに置かれた湯のみを手に取る。茶を持って来た結衣(ゆい)を振り返り修一は笑いかけた。「ありがとう」 結衣は声を出さず頷いて微笑んだ。白い頬に笑窪が刻まれる。その窪みを見るのが、十年来、修一の幸福だ。 日がな一日本ばかり読み、ろくに話をする...

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緑雨

これは小説(フィクション)です。執筆2004年5月2日 『rainy days』掲載緑雨 緑に浸された木々の中、あなたは立っていた。 白い傘に降り注ぐ雨の筋は銀色に光る。薄い青のスカートが、光に囲まれて淡く滲んでいた。 まるでそこだけ太陽の光が当たっているようだった。声をかけるのも忘れて、光の場を遠くから眺めてみる。その姿が何度も見続けた幻のような気がして怖くなった。けれど十五年ぶりに見た真っ直ぐな背中は、確かに...

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