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橋本左内のことを調べていて何故か(笑)ヒットし、ついでに久しぶりに覗いた『はじめての三国志』さん。
疲れるのであまり見ないようにしつつ、一記事だけ拝読した。

『ええっ! そうなの? 陳寿の三国志が簡素な理由』

※上サイト様は盗用防止のためかコピーできないシステムに変更されたようですが、著作権法第32条(批評のための一部引用は許される)に基づき引用させていただきます。
(陳寿は信ぴょう性のある文献のみ載せ、推敲を重ねたため簡素ですっきりしているという評価に対して)
その陳寿の隠された真意を喝破したのが清の陳れい(サンズイ+豊)でした。
彼は、陳寿は蜀びいきであり、蜀漢の人材を詳しく書こうと思った、しかし蜀の文献は極めて少なく、魏はおろか、呉にさえも見劣りしてしまう。そこで、魏や呉の文献を減らす事で蜀とつりあいを取った。
などと言うように主張しています。
ええっ! そうなの? 笑

……失礼。
そんなわけあるまい。

kawausoさんが「にわかには信じ難い話」と仰っているように、あり得ないこと。
陳寿は蜀出身なので蜀びいきとよく言われるが、私はむしろ貶めている部分もあると感じる。
ほとんど捏造とさえ言える箇所もあるのだけど、何故皆さん気付かないのだろう? 長年の疑問。
あれだけ下手な捏造文書はない。

まあそれは陳寿が悪いのではなくて、魏ベースの晋へ配慮しなければならなかったという事情のせい。
現代中国人たちの、国家へ配慮した捏造発言の数々を見ていれば分かるだろう。
 参考 ⇒三国志キャラの星座さえ国家へ忖度して捏造する中国人の習性
おそらくこの忖度と捏造の習性は古代から。
しかし陳寿自身が内心で故郷を愛していたことは疑いようがない。行間から(特に評から)その感情が伝わって来るので、「蜀びいき」と言われるのかもしれない。

なお、このことはkawausoさんのカウントで裏付けられる。
貴重な検証。
では、三国志を構成する魏志、呉志、蜀志の文字数を調べてみましょう。
魏志207,000文字 呉志103,000文字に対し、蜀志は、57,000文字となっていて、蜀志は魏志の4分の1、呉志の2分の1しかありません。

三国志の一角を占めながら、分量は全体の2割未満というのでは、確かに蜀書は分量が圧倒的に少ないと言えます。
比率で言えば、魏志は56%、呉志28%、蜀志は16%になります。
という結果が何よりも私の言ったことを裏付けていると思う。
元々これは頁数の定められたうえで依頼された史書だと思うよ。表向きどうだかは知らないが。
私選と言うが、本当に私的な趣味目的で書かれた歴史書なら現代まで正史として残っていることはないだろう。

魏の史料が多いのは「正当な王朝」とされたから、とkawausoさんも書かれているように当然のこと。
ただ蜀の史料が元々少なかったのかは分からない。故意に廃棄された可能性もある。(その可能性のほうが高い)
魏の制度についても詳細に書かなかったのは、やはり当時の政府への忖度だろう。もし現に晋で続いている制度なのだとしたら、前身の国家人物の手柄にするわけにはいかない。

大事な事: 歴史書は、未来の歴史マニアの研究のためなどに編まれるものではない。ほとんどは政治的な目的で、その当時の政府のために編まれるものである。「私選」であったとしても秘密の洞窟で隠しておくのでない限り、政府の検閲は必ずあるので、(その当時の政府に)忖度しないわけにはいかないのだ。
現代ジャーナリズムや西洋的な歴史学とは本質が違うのだということを理解しなければ誤る。

【関連記事】 天下三分の計は捏造? 「梁父の吟」の真実

それにしても記録文の割合から考えると、今日に至るまで民間の物語上では圧倒で蜀の話ばかり語られてきたという事実が、改めて凄いことだと知った。
それだけ愛されたということ。蜀の人々は感謝せねばね。

歴史マニアさんたちは、知識を自慢したり一般論に反対の立場だと見せつけるためだけに悪口を言うのではなく、「何故、民間伝承が今のようになっているのか」ということから真相を読み解いていってほしい。
それが、「自分の頭で考える」ということ。

史書は嘘をつく。
一般民衆の想いだけが、歴史の真相を伝える。

(あくまでも「想い」です。フィクションがそのまま事実だと言う意味ではないので誤解されないように。フィクション設定は本当にしょうもないものばかり、しかしその背景にある「想い」を読み解くのが歴史学ではないのか? 三国志以外のジャンルではそういう誠実な研究が行われていると思うのだけどね。三国志だけは、ファンの熱烈な想いから悪口合戦となっており、冷静な判断をする人が少ない。ウヨサヨの争い的な、政治思想と同じ臭いがする。――是は実は中国共産党の思惑に乗せられているということになるのだが、現代日本人は本当に世界のことを何も知らないのだな)


余談

今回キーボードで「魏志、呉志、蜀志」を変換して初めて気付いたのだが、「魏志」だけはそのまま変換されるんだね。
さすが『魏志倭人伝』で使うだけある。
それなのに、
「邪馬台国を記述した魏志倭人伝は、この魏志に掲載されているというのは、意外に知らない人も多いのではないでしょうか?」
とのこと。意外だなあ。
でも現代日本人は確かに知らない人のほうが圧倒で多いかもしれない。
私も17歳まで三国志は日本の物語で『里見八犬伝』シリーズの一部だと思っていた人間、(酷いな)笑。他人のことは言えないか。

で、こんな人気のないジャンルの記事を書くと引かれて明日からアクセス減ることは分かっているし。書きづらいな……。


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吉野 圭(Yoshino Kei)
Posted by吉野 圭(Yoshino Kei)
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