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10/8 改稿 余談だった話はカット、足りなかった話を加筆

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近年、輪廻転生を否定したい人たちが好んで使うのは、「記憶は作り変えられる」という理屈であるらしい。
ワイス博士に代表される退行催眠で語られる「記憶」を否定するための理屈。

ところで退行催眠は元々PTSDを治療するための精神医療の手法だったはずなのだが、宗教的理由から「輪廻転生」を否定したいと言って、治療手法の一つを全面的に潰してもいいと思っているのだろうか? それで苦しみから救われる患者は大勢いるはずだろうに。
専門家でもない私が言うことではないのでここでは措いておくが。患者を救う目的を優先して、専門家同士で議論してもらいたい。

私が何よりも気になるのは、否定論者たちがまた「100%」「全て」という用語を使っていること。※
彼ら否定派の主張によれば、退行催眠で得られる「前世記憶」は100%、催眠術師の誘導で作られるフィクション、もしくは被験者が願望で創作した物語なのだとか。

この一つ一つの事例を検証することのない、頭の悪い決めつけ(思考停止)が私は嫌いだ。
そこで、上の理屈が彼らの言うように100%全ての事例に当てはまるのかどうか考えてみた。


■記憶とは、それほど簡単に自由自在の書き換えが可能なのか?

上の説を主張する否定派の人たちは、「記憶の作り変え」が誰でも簡単にやりたいと思ったとき実行できると考えている。
専門家でもない催眠術師が他人の記憶の作り変えを行うことも簡単だし、自分自身で記憶を作り変えるのはもっと簡単だと。

しかし、もしそれほどまでに記憶の作り変えが簡単で全員が日常的に行うことが可能なのだとしたら、過去の辛い体験の記憶で悩んでいる人はこの地球上から一人もいなくなっているはず
PTSDに苦しむ人だけではなく、失恋した記憶も、家族を失った記憶も、不快で都合の悪い思い出は全て消せる! ことになる。
そうだとすれば、欲望に弱い人類のこと、多くの人たちが「モテてモテて仕方がなかった俺・私」などの快楽記憶を創作してその記憶に中毒するだろう。
“記憶依存症”で廃人となった人たちが巷に溢れていてもおかしくない。

また、自分や他者の記憶を作り変えることがそれほどまでに簡単なら、政治家たちの「記憶にございません」との嘘も事実になってしまう。
借金をした記憶も消せることになってしまうので、全ての債権が無効になる可能性が出てくる。

しかし今のところ、現実はそのような社会になっていない。

残念ながら、現実は辛い思い出を忘れられずに苦しんでいる人で溢れているし、政治家の悪事も債権も「無かったこと」にはなっていない。(政治家の悪事だけは権力の圧力で、あたかも無かったことのようになっているが現実になくなったわけではない)
快楽記憶に24時間閉じ籠もって仕事をしなくなってしまう、“記憶依存症”で廃人となっている患者を見かけたこともない。

このような現実だけを見ても、「記憶の作り変え」は彼らが言うほど簡単で、誰でも気軽にできるものではないことが分かるだろう。

■実際の、人為的な「記憶の書き換え」法

実際には「記憶の作り変え」を他人が行うためには、次のような専門技術が必要となる。

 別サイト参考 ⇒記憶の書き換え方法 より引用(……は略、太字は当ブログ筆者による)
 特定個人の過去の情報を充分に知っていれば、起きてもいない犯罪を自分が犯したと簡単に信じ込ませることできるらしい。こう主張するのは、英ベッドフォードシャー大学とカナダ、ブリティッシュコロンビア大学の研究者だ。

 人の記憶ほどあてにならないとは良く言うが、いとも簡単に冤罪を作り出してしまうことができるという。
……

 この研究では、前準備として大学生60名の保護者にその学生が11~14歳のときに経験した出来事を聞き取り調査した。その後、学生本人に40分間の”和やかな”面接を行ない、記憶の書き換えをした。

 その結果、70%を超える被験者が、「暴行や窃盗を11歳~14歳の時期に犯したことがあり、警察の取り調べを受けたことがある」という架空の記憶を「克明に思い出した」と答えたそうだ。
……
 この実験の面接では、冒頭に10代のときに経験した2つの出来事を被験者の学生に話している。そして、それぞれの内容を思い出すよう彼らに求めた。実はこの内の実際に起きた本当の出来事は1つだけだ。

 被験者が偽の出来事を上手く説明できないでいると、質問者は思い出せるように励ましながら、”特別な想起術”を説明する。2回目および3回目の面接でも、質問者が再度、両方の出来事を出来るだけ詳しく思い出すように求めた。
 
 ベッドフォードシャー大学のジュリア・ショー博士によれば、和やかな面接でいくつかの誤情報とデタラメな記憶術を伝えた結果、3時間ほどで詳細な偽の記憶が作り出されたそうだ。
この実験の場合は専門技術を持った人物が、被験者の個人情報を知ったうえで、「特別な想起術」を用いて記憶の書き換え技法を施している。
それでも記憶の書き換えが行われた者は70%に留まる。
(否定論者ショック! 100%ではなかった)
この結果から、誰もが100%・簡単に・自由自在に記憶の書き換えを行えるものではないと分かる。

さらに現実を言えば、上のような専門技術を持たない人々による「記憶の書き換え」は、長期間の監禁絶え間ない暴力による恐怖がなければ不可能だ。
否定論者が言っているように、「前世記憶を持つ」と主張している人々は、その全員が高度な専門家の施術を受けたのか? または監禁・暴力による洗脳を受けたのだろうか?
もしそうだと主張するなら、一つ一つの事例について監禁または専門施術を受けた証拠を見せるべきだ。

まとめ
退行催眠の記憶のうち何%かはプロである催眠術師による誘導が含まれることは確か。しかし、監禁・拷問なしに100%作り変えることはプロでも不可能。まして専門技術を持たない素人に、自由自在な記憶の作り変えはほぼ不可能と言って良い。
∴ 「退行催眠は100%記憶の作り変え」という主張は誤り


■脳は再生ビデオテープではないことは事実。だが、人の記憶は決して自由ではない

監禁や暴力による洗脳の他に、もう一つ。
「自分が望んだ記憶を、自分自身で作り出している」可能性があるかどうか考えてみる。

脳は再生ビデオテープではない。
これは確かな事実だ。

人の脳は現実で見たものや聞いたものを、一時的な記憶(メモリ)として保存する。
その後、必要な記憶を取捨選択し、長期記憶として保存していく。
この取捨選択の際に、記憶が再構築されている。
つまり、現実という素材をベースにしつつも、ある種のフィクションとして物語を作って「自分の記憶」として保存していくわけだ。
これは誰でも同等に持つ脳の仕組みで、決して統合失調症のような病的な状態にある人だけに限られた特殊な話ではない。

ただ、多くの人は、現実に起こったこととさほどかけ離れていない記憶を持つ。
何故なら他者の意見や、紙などに書かれた「記録」をヒントにフィードバックして、「確かに事実であろう」という記憶のみ選んで再構築し続けているため。

 上URLより参考記事 ⇒個人の記憶は無意識のうちに書き換えられていく、「社会への同調」で生まれる「ニセの記憶」
われわれは社会的動物であるから、過去の記憶も、社会的圧力に即する形で絶え間なく修正されているのだ。……
神経科学者チームは、個人の記憶が、さほど時間が経たないうちから、他者の意見によって変化しうることに着目した。
……(虚偽の記憶が本人のなかで事実となったケースは被験者の40%ほどだった)
 虚偽の記憶が永続したケースと、「社会への同調」によって一時的に誤った回答をしたケースとで、脳の活動を比較した結果、研究チームは、記憶間違いの神経的要因を突き止めることに成功した。主要な引き金になっているとみられるのは、2つの脳の領域、海馬と扁桃体が同時に激しく活性化することだ。

 海馬は長期記憶の形成に関わっていることで知られる領域、扁桃体は脳の感情中枢だ。この2つの領域が同時に活性化すると、正しい記憶と虚偽の記憶は、虚偽の記憶のほうが社会的要素を帯びていた場合、入れ替わってしまうことがある、と研究チームは述べている。このことは、他者によるフィードバックは、われわれの記憶する体験を形づくる強い影響力を持っていることを示している。
「過去の記憶も、社会的圧力に即する形で絶え間なく修正」
「他者の意見によって変化しうる」
ということは人間の脳がプロパガンダによる洗脳に屈しやすいという危険性も持つ。(上の記事はその危険性に着目した警鐘)
だが通常の状況であれば、脳内の一時記憶だけよりも、メモや他者の話をフィードバックしたほうが現実性が高まるのだから当然の機能だろう。

このことは、人間の記憶が、決して完全に外界から切り離されたフィクションではないことを証明している。
つまり、
「個人の記憶は外部の情報に依存し・縛られている」
ので、
「自分一人の欲望だけで好き勝手に書きかえられるものではない」
と言える。

例:
「借金を返したくない!」と思っている人は多い。そのような人は、「できることなら借金した記憶を消してなかったことにしたい」と願うだろう。でも貸した人は貸したことをはっきりと覚えている。しかも借用書がある。この厳然たる、脳の外部に存在する裏付け情報によって、個人は自分勝手に記憶の書き換えを行うことができない
(認知症や人格障碍など記憶障害を起こす状態を除く)

「記憶は自由自在に、自分の好き勝手に書き換えられる」
と主張する人々のほうこそ妄想的な勘違いで、願望による夢を見ているのだと言える。

もしかしたら訓練すればこの現実の束縛を解除し、自由に記憶を書き換えられるようになるのかもしれない。
しかしそのためには相当の訓練が必要。誰もがそのような境地に達することができるわけではない。
従って、「誰もが100%・簡単に・日常的に・自由自在に記憶の書き換えを行える」という主張は嘘だと分かる。

まとめ
脳が病的な状態でない限り、外部の情報を完全に無視した願望記憶を自由に創作することは不可能。
脳は常に外部の情報をフィードバックして記憶を作る。つまり、外部に縛られている。
∴「記憶は100%その人の願望で作り変え可能」と主張するのはそちらのほうが妄想/脳が後から外部情報で記憶を書き換えないにするためには、記憶をメモしておけば良い
(前世記憶を見た時はその記憶をメモする必要がある。こうすれば後から見た情報で操作されることはない)


■科学者とは、思考停止の人のことを言うのか?

否定論者を眺めていて不思議に思うのは、自分の考えに合わない都合の悪い情報は完全に無視してしまえる脳の構造だ。

たとえばワイス博士の著書にも現実で確認の取れた「前世記憶」について書かれている。少なくともその事例については「記憶の作り変え」などでは説明できないことが分かるのだが、否定論者はその情報だけは完全無視して「前世記憶は、記憶の作り変えだ!」との主張を繰り返すのみ。
そしてその考えを「科学的だ」と言って、自らを「科学者」と呼ぶ。

前に引用させていただいた事例では、3歳の子供が「自分は前世で~という男に殺された」と前世記憶を語った。
その子供の証言をもとに、遥か遠く離れた地域で起きた殺人事件が判明して犯人が逮捕された。
有名でも何でもない、遠く離れた地域の事件について3歳の子が知る術はない。従って潜在記憶による「記憶の作り変え」は不可能だ。
――ところがある科学者はこの事例を聴いた後に、「前世記憶は全てDNAの記憶だ」と言い出した。
「死んだ男が遠く離れた土地に歩いて行き、生殖活動してDNAを受け継がせた」と主張するとは。恐ろしい。
「輪廻転生は存在しない」という宗教教義を押し通すためなら、ゾンビというさらに有り得ない存在のほうを認めてしまう思考回路はホラーでしかない。
“ゾンビが子作り”という発想も恐ろしいが、それ以上に何かの教義を信じたら思考停止する人間の見本を見た想いで恐ろしかった。

科学者とは、「目の前の情報を完全無視できる才能を持つ人」のことを言うのだろうか? 
私は目の前の情報に誠実で、その研究についてなら何事も無視せず思い込まず、公平に思考しようと努める人のことを「科学者」と呼ぶのだと思っていた。いつから用語定義は変わったのだろう?
この目の前の情報を完全無視できる人たちは、「科学者」と言うよりも、「カルト信者」と呼んだほうが一般用語の定義に近くなると思う。


■退行催眠で蘇る記憶には創作が大幅に含まれる、のは確か

以上は、「記憶は誰もが自由に書き換えられる」と主張している人たちの誤りを正すための反論。
この「記憶書き換え論者」たちが夢見ているほど、記憶は激しく流動的、自由自在なものではないということだけを言いたい。

だからもちろん、「人間の記憶の全ては事実だ」と主張するつもりはない。
前項目で書いた通り誰の記憶にもフィクションが含まれている、と言うよりは、事実ベースのフィクションこそが記憶の正体だと思うのが正しい。
たとえるなら自伝のようなものか。

いっぽう退行催眠など、催眠状態にある際に浮かんでくる「記憶」には覚醒時よりフィクションが多めに含まれるだろう。
それは睡眠中の夢に近いものだからだ。/実際の前世記憶は睡眠中の夢とは違う。明らかに違うという感覚がある。逆に言えば、夢っぽさが残っているならその箇所はフィクションなのだろう

またプロの催眠術師の施術による退行催眠の場合は、誘導が刷り込まれている可能性は否定できない。

たとえばブライアン・L・ワイスは元々「前世」を探る目的で施術していなかったため、イメージの誘導を行っていた様子はない。
一般に売られているワイス氏による催眠CDの「泉」や「鏡」「階段」などのイメージは、催眠状態に導入するためのものであり、前世として思い描く景色とは無関係。
(この催眠導入手法を指して「前世記憶は全て誘導されたもの!!」と騒いでいる否定論者は無知過ぎる。要勉強)
ただし一般に売られている『退行催眠CD』は短いので、催眠状態にうまく入るのは難しく、導入のためのイメージを前世と勘違いしてしまう人はいるかもしれない。

いっぽうマイケル・ニュートンは始めから「死後世界」を聴くための催眠をかけているし、導入手法が定かではないので誘導がなかったかどうか不明。
被験者たちがニュートン氏の思想に無関係な回答をしている箇所については「誘導はなかった」と言えるが、完全なる性善説など、一部は疑わしいと思う。

退行催眠で前世を知ろうとする人は、「フィクションも多いはず」と疑ってかかり、全てを事実だと思い込み過ぎないことが肝要だ。

前世記憶は「100%記憶の作り変え」ではないのと同等に、「100%事実でもない」のだと言える。
何%が事実の記憶なのか知るためには、今世の記憶と同じく現実のフィードバックに頼るしかない。

なので私はずっと、「現実照合しろ」と言っている
自分の記録を見つけられる人は少ないと思うが、とにかく考えることが必要だ。「現実ではないのでは?」と考えるだけでもいい。
退行催眠のイメージに、無批判に飛びつくことだけは避けて欲しい。
批判的精神だけが記憶を現実に役立たせる

霊能者に言われたことや、「夢枕に立った神様からのお告げ」などを鵜呑みにするのは論外。
そのような人は詐欺・カルト宗教勧誘に遭いやすいし、いずれ自分自身が詐欺師となってしまう。
他人(夢枕の霊でも)の言うことを鵜呑みにしてしまう人は
「前世記憶なんか100%記憶の作り変えだ!」
と主張している思考停止の人たちと全く同じ。

どちらにしても、無考えの思考停止は有害で危険だ。



まとめ。

他人から与えられた情報を鵜呑みにするだけのスピリチュアル信者も、自称・科学者のカルト思考を持つ人たちも、思考停止しているという点で本質的に全く同じ人種である。
どちらも詐欺師の鴨になりやすい。
考える癖をつけて欲しい。


※以前、私も宗教団体に関する話で、「100%ない」や「絶対ない」という言葉を使ったことがあります。
ただし私は、信仰を100%否定する者ではありません。信仰は
本物の信仰は自分一人で信仰すればいいはず。団体に入って生活保護費や母子手当を団体へ横流しし、教祖様の言いなりに詐欺や殺人する必要は全くないでしょう。
「全く必要ない」という意味で、やはり宗教団体への入信という行為は100%要らないと言えます。


続き >>自分はどうなのか? 考えてみた
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Posted by吉野 圭-Yoshino Kei
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