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先日の誹謗中傷に賠償請求200万円のニュースについて、追記。
専門なので少し法的なことにも触れておきます。

前記事では軽い感じでこのニュースに触れたのだけど、現実にあの事件の経緯を眺めると酷い。
記事では「DeNA井納投手の妻が執念の投稿者追跡」と書かれており、まるで奥さんが「ブス」と一言だけ言われたのを恨んで書き込み者を追跡したような表現をしている。
実際はそうではなく、この書き込み者のほうが毎日しつこく奥さんを追いかけて執拗に悪口を書き込み続けたらしい。
しまいに子供に対する攻撃行為にまで及んだので、「これは見過ごせない」ということで訴訟に踏み切ったという経緯。
「たかが悪口」という軽い程度ではなくてご家族全員に対する暴力行為なのだから、200万円の請求では安いと思う。

ちなみに上記事では、
清水弁護士は、慰謝料の上限が100万円なので、
と書かれているのだがここは記者の理解不足だろう。
弁護士は、「判決で認められる上限の平均が100万円程度」と言ったはず。つまり、「相場」という意味。
慰謝料(精神損害の賠償)請求に、法律で定められた「上限」などはない。よほど世間の常識からかけ離れていない限り、当事者の合意で幾らでも請求できる。

あと付け加えておくと、「慰謝料」とはあくまでも精神的損害に対するものだから、実際に発生した損害額(財産的損害)の賠償請求とは別になる。
たとえば被害者が事業を経営していて、悪口を書き込まれた結果として収益が減った場合、その減った分の額を請求される。
被害者が著名人であり、悪口のせいで仕事を失った場合も同様にその損害を賠償する必要がある。
と言うことは、これらの場合一般人には一生かかっても払えない額が請求される可能性もある。
しかも不法行為に基づく損害賠償には、借金と違って自己破産での免責がない。(破産法第253条1項2号)

また、当然ながら犯罪なので損害賠償とは別に刑法処罰もあるし、いわゆる「前科」がつく。
逮捕されただけでも仕事を失い、離婚される可能性もある。
「欲求不満の解消」や「嫉妬」などという身勝手な理由で、楽しく書き込んだ悪口によって人生を失ってしまうわけだ。
誹謗中傷の罪と罰はそれほど甘いものではない

【参考】
「誹謗中傷」とは一般用語です。正確には、下記の刑法で処罰されます。

・名誉毀損罪
刑法第230条
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

・侮辱罪
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

ポイントは、「公然と」というところ。
複数人でも「公然」ということになりますので、ネット上の書き込みはもちろん、会社内で悪口を言った場合も成立します。
またパスワードが必要な掲示板や、ラインのグループトークなどで悪口を書きこんだ場合も、その人が貶められて不利益を被るなら成立します。

この罪が成立するのは、その人の氏名やURLを書き込む場合はもちろんですが、隠語としてのニックネームも含みます。
つまり、「誰のことか分かるように悪口を書きこんだ場合」は全て上の罪が成立する可能性があるということです。

これとは違い、誰のことか分かるように書かれていない批判や、集団(法人を除く)へ対する抽象的な悪口では上の罪は成立しません。
ただし人種に対する差別行為や発言は、いわゆる「ヘイトスピーチ対策法」で今後取り締まりの対象となります。

なお、上のニュース記事では「プライバシー侵害である可能性」と書かれています。と言うことは、住所などの書き込みもあったのかもしれません。
プライバシー権侵害とは明文化された法律ではないのですが、憲法上保護される人権侵害です。
たとえばネット上に住所や生年月日を書き込んだ場合などがこれに当たります。
名誉毀損などと同様に損害賠償の対象となりますが、被害者が引っ越しを余儀なくされるため、高額請求になるケースが多いと思います。

※このブログでは法律相談は受け付けていません。誹謗中傷対策が得意な弁護士を検索してご依頼ください。



以下は世間話続き。


あれから著名人たちが語り始めている。
20180206google.gif
2018/02/06現在。

こちらのツイッターまとめも面白い。
  ⇒「嫁がブス」中傷で200万円請求!インフルエンサーは訴訟で億り人なれるね。



本当に、たむけんさん天才。


去年の日本での人権侵害書き込みは過去最高だったとか。益々日本人の民度が低くなってきていて、嘆かわしい。
特に、有名人に対しては異常とも言える人権侵害の書き込みが溢れていて目も当てられない。
有名人の皆さんは「イメージダウンする」等と躊躇していないで訴えたほうがいいと思う。
そうしなければこの人たちも変われない。この人たちのためにならない。

前も書いた通り歴史人物に対しての悪口も、半端ではなく酷い。死者に対しては言いたい放題の人道に反する誹謗中傷が行われている。
かつてある三国オタで曹操崇拝の腐女子(自称・三国志博士)が、孔融という人物を貶めるために嘘の話を史実として吹聴していたので注意すると、
「死者に対しては何を言っても罰せられないから、どれほど酷い誹謗中傷でも書いていいんだ! 高名な歴史学者もそう言っていた!」
と逆切れして今度は私を攻撃してきた。
法律で罰せられなければどんな犯罪行為も許される、と仰るとはね。誰も見ていなければ殺人もOKとする人。
自分が経験しなければ分からないなら、ご自身が顔写真をネットで回されて「ブス」と嘲笑されてみますか? それとも社会的に抹殺されてみる?
そこまでされなければ理解できないとは人として終わっているな。(こういう心が醜い人を本物の「ブス」と言うのだと私は思う)

本来はこのように腐った人間が成長しないよう、教育から変えていくべきだ。
「おてんとさまが みている」
天知る 地知る 我知る 人知る
などの古くからある真実の言葉を復活させるべきだろう。
でもそれでは今、酷い中傷で苦しんだり、自殺しかかっている人が救われない。
もう自殺していく人々を黙って見ていることに耐えられない。

最近は弁護士保険も出来たらしいが、まだまだ高いな。
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 ⇒弁護士保険

やはり法改正が必要。
人権侵害の悪口には簡易的な裁判のワンステップで、書き込み者の住所氏名が公開されるように改正すべきだろう。弁護士に任せるにしても、この弁護士費用が安くなる仕組みを考えていかなればならない。


あとは言論の自由との兼ね合いか。
誹謗中傷を取り締まる法律が、政治家や権力者を守るため使われるようなことがあってはならない。絶対に共産中国のような国にしてはいけない。
また、創作作品の正当な感想が書けなくなって、言論が萎縮してしまっては駄目。
正当な批判と人権侵害の誹謗中傷との区別をつけなければ。

よく「正当な批判と、人権侵害の誹謗中傷との区別は難しいから不可能」などと言うけどそんなことはないでしょう。
たとえばアマゾンのレビュー担当者のように、作者に対する人格攻撃の書き込みを「正当なレビューだから大歓迎」などと回答するのは愚かの極み。
一般の大人はアマゾン担当者ほど愚かではないから、判例はもちろん、ネットに蓄積されたマナールールが活用できると思う。
完璧を目指すのは難しいが、「正当な批判と人権侵害の区別」は不可能なことではない。


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吉野 圭(Yoshino Kei)
Posted by吉野 圭(Yoshino Kei)
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