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生活保護課のケースワーカーを描いたドラマ、『健康で文化的な最低限度の生活』第2話を見ていて感嘆した。
細かく現実的な設定だったので。



第2話ストーリー:
生活保護を受けている家庭の高校生がアルバイトをしていることが発覚した。
生活保護受給家庭は、家計を一つにする家族全員の収入を申告する必要がある。たとえ高校生の子のアルバイトでも給与額を申告しなければならない。生活保護費はその分、減額となる。
申告しないと「不正受給」となってしまい、減額分に相当する全額を徴収される。
このドラマの設定では高校生がアルバイトした給与分、全額が徴収されることになる。
しかし受給者である母親は子がアルバイトをしていることを知らず、子はもちろん申告義務があることを知らなかった。
困り果てた母親から
「知らなかったのに返さなければならないなんて、おかしい。どうにかなりませんか?」
と詰め寄られた新人ケースワーカーの義経は、“不正受給する意図がなかった場合は法63条が適用され、返還額の一部が控除される”ことを思い出し、つい
「大丈夫です! 全額返さなくてもいいかもしれません」
と言ってしまう。

事情通は
「ああ……安易に“大丈夫”と言うのは絶対タブー」
と頭を抱える展開。
案の定、法63条は適用されない。
かつては高校生アルバイトの給与は大目に見られていたのだが、厚労省の通達で高校生のアルバイト代も徹底して徴収するようになったのだった。
そう、このドラマの通り日本の例外規定は弱者に厳しく、たいてい弱者には適用されない。
(いっぽう政治家など権力者にはどこまでも甘く、例外規定などなくても自在に例外を作り無罪放免となってしまう)
そういう国なのだ。

ここまで細かく条文や通達まで調べ、さらに「法があっても適用されない」など現場の現実まで描いていることに驚いてしまった。
さすが原作がマンガなだけある。凄いな、マンガ。
最近はこういうリアルな創作はマンガだけになってしまった。
こんなの利権に縛られているテレビ局がオリジナル脚本で描けるわけがないし、小説でもなかなか出会えない。
小説を書いている作家さんたちはマンガ家の勇気と真摯さを見習って欲しいな。

「リアル」と言っても、もちろん創作なので良い話でまとめてしまうのは仕方ない。
現実現場はもっと遥かに深刻で悲惨、未消化の出来事ばかりだろう。
ケースワーカーの人たちがこのドラマの主人公のように仕事していたら一か月と精神がもたないと思う。
ただ現実の出来事が反映されているのは確かなので(ケースワーカー視点と言うよりは受給者視点で)、価値あるドラマだと思った。

*

それにしても、高校生のアルバイト代まで巻き上げるのは本当に酷い。【補足参照】
子供にしてみれば、家にお金がないことが分かっているので親に小遣いを求めることができず、がんばって自分で稼いで好きな物を買っているわけだ。
“小遣いさえ親に求めず自分で稼ぐ”
とは普通なら感心すべき子供の行動。
そんな涙ぐましい子供の努力と誠実を国は奪って踏みにじる。
「好きな曲が聴きたい」「将来の夢を見たい」という、ささやかでまっとうな願いをも奪う。
生活保護を受給している家庭の子供は、CDの一枚すら買う権利がなく、将来の夢を見る権利もないと言うのか?

趣味だけではない。
子供によっては将来の学費を自分で稼ごうとしてアルバイトする場合もあると思う。
生活保護費で大学へ行くことは絶対不可能。しかも国は奨学金を出してくれないのだから、高校時代から自分で働き貯めておくしかない。それしか、将来を得るための手段がない。(金利の高い借金を背負う以外では)
だから睡眠時間を削って働き、フラフラになりながら稼ごうとする。普通の家庭の子ならしなくてもいい苦労なのにそれを耐えて、学費を貯金したとする。
ところがそんな血の滲むような努力も国が奪うわけだ。
「貧乏人の家庭に生まれたら、自分で学費を稼ぐことすら許されない」と国は言う。
何故なら多くの国民曰く、
「貧乏人の子が学校へ行く権利はない」
「お前ら下等民は代々貧乏でなければならない」※
から。
こうして代々の貧困階層が強固に作り上げられていく。
これがカースト制度でなくて何なのだろう?

……不覚にも涙が出てしまった。
高校時代の絶望感を思い出して。

“選択すべき将来の道がない”
“この国で生きることを始めから赦されていない”
という、あの絶望。
未来を思い描いても真っ暗な世界しか見えなかった。

ドラマでは高校生が
「バカで貧乏な人間は 夢見んなってことかよ!?」
と叫ぶ。
それはちょっと違う、と言いたかった。
他人より遥かに勉強ができた私も、ただ家が貧乏というだけで夢を見ることが許されなかったのだから。君と私は同じ^^
この国では、バカかどうかなど関係ない。能力など一切関係ない。

日本は目に見えない形で、金を基準とした厳格なカースト制度が敷かれた国だ。
頭が悪い子供でも、親が金持ちであれば良い学校へ行ける。
この国の学歴は金で買う物。
だから見ての通り、この国のトップは頭の悪い人々と犯罪者ばかりで溢れている。

これもまた日本の根深い病理の一つ。
あらゆる方面でこのように道理が通らず、発展するより衰退する道が選ばれているので、この国が滅びることは必至だと思う。


※「貧乏人の子は代々貧乏でなければならない」: 「お前ら貧乏人は先祖がクズの下等民族だったから今も貧乏なだけ」「我々は先祖が優秀だったから金持ちなんだ」と主張する人々がいる。
現代の階級は、GHQによって反転されていることを彼らは知らないらしい。現代「下々」扱いされている貧しい家系はかつての富裕層、現代の「金持ち」はかつての小作人や使用人。――これが真相だから、もし彼らが言うように血統主義を貫くなら、再び彼らは使用人に戻らなければならない。
でも、それも間違っていると私は思う。そもそも人を血統で差別すべきではない。能力のある者が、能力に応じて正当な評価を与えられる正当な世界になって欲しいだけだ。(なんて、古代から多くの人が願ってきたことであるのにいっこうに叶わないな)



補足。
この記事はドラマの感想として書いたものなので、詳細を省いています。
用語や条文も正確な引用ではありませんからご注意ください。

生活保護費の不正受給が許されるわけではないことは言うまでもありません。
高校生からバイト代まで返還させるということも、法に基づく運用が行われているだけのことで、現場の方々が「高校生から夢を奪う目的」で仕事をしているわけではないことを言っておきます。

ただ悪意のない人たちに対してまで免責のない「徴収」を適用するなど、運用を厳格にするよう指導している者たちに差別心があり、格差を進めるための隠された意図があることは否定できない気がします。
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吉野 圭-Yoshino Kei
Posted by吉野 圭-Yoshino Kei
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