振り返れば「ほのぼの」でまとまる人生でした。人生の結末は心向きが決める
このたびの電子書籍化不具合のおかげで、『僕前』という自分の私小説を何度も読み直すことになってしまいました。
修正作業のためじっくり読み直すこと三回。
書籍化した後のチェックも含めれば計五回くらい……。
本当に疲れてしまいましたが、何度も読み直すことであの当時へ心が戻ったのは良かったと思います。
こんな作業の機会でもなければ自分の書いた小説を読み返すことはないので、貴重な体験だったと言えます。
(と、前向きに考えて夏休みを失った自分を慰めてみる。笑)
前世記憶を“ダウンロード”した時の衝撃、パズルのピースをはめるように記憶が記録文へ正確に当てはまっていくドキドキ感などを再体験しました。
図書館での理子との対話シーンはフィクションですが、似たような場面で「あなたはあなた!」「今の君が好き!」と言ってくれた人たちがいたなと思い出して心が温かくなります。
振り返れば現代では幼い頃から苦しみが多かったけれども、最終的には人の優しさに包まれ“ほのぼの”でまとまってきました。
実は前世も同じ。
振り返れば何故か“ほのぼの”、牧歌的に見えます。
ジェットコースターのような人生でとうてい「ほのぼの」とは見えないでしょうが、私があの人生全体を振り返ってみるとアンチの黒々とした悪意よりも、人の愛のほうが際立って見えます。そのために遠い景色は温かい日向(ひなた)の色で染められています。
たぶん私自身の心に裏切りがなく、最後まで奇跡的な信頼に包まれていたからかと。
幸運だったとも言えます。
しかし心向きが幸運へ導いてくれた気がしています。
人生全体のいろどりを決めるのは結局、自分自身の心なのかもしれません。
これは努めて険悪になろうとしてもなりきれない私の性質――険悪なポーズに疲れてすぐ息切れしてしまう(笑)私の、半端な性格を表しているのでしょうが。
軟弱者ゆえに最後はソフトランディング、「ほのぼの」を無意識に選んでいるのだとすれば本気で闇落ちすることはない。軟弱性格で良かったなと思います。