三国志、歴史|隆中譚

    ナチュラルボーン・サイコパス、曹操への感情

    このことは書いたことがなかったかもしれない。
    曹操について私個人の感情を書いておきますと、「皆無(ゼロ)」です。

    意外ですか? 

    「アウト」な奴は危険な細菌と同じ。公平に観察するだけ


    驚かれるでしょうが曹操について私は、好きや嫌いの個人的感情はありません。
    もちろん生理的嫌悪はあります。
    私は、無辜の民に対するジェノサイドを行った人物や宗教団体は、世界中どこの国の誰であっても心底軽蔑し嫌悪を覚えます。
    それが好き嫌いの感情かと言うと難しいのです。あまり同じ人間としての感情が湧いてこないため。

    【参照】 史実で曹操が行った虐殺・粛清リスト

    その意味で私は彼らを公平に見ていると言えます。

    ヒトラーも曹操も同じ「アウトな独裁者」カテゴリーへ分類しているだけのこと。そして、どうしたらこういう人々の残虐行為を防ぐことができるのだろう?と考えるための、観察対象として眺めます。

    危険な病原菌の観察のようなものです。
    接触はとても無理。「時」という絶対的隔たりである、透明のガラスケース越しでなければ観察し続けるのも無理でしょう。同時代で生理的嫌悪が強く湧いてくる相手を観察するのは、おそらく心のエネルギーがもたないと思います。
    (相手が敵対国のトップなどであり、仕事と割り切れば観察することは可能でしょうが)

    史実の曹操が、自作品のサイコパスキャラと似ていた


    さて今回、翻訳した箇所は『正史』へ実際に記録されている文章です。裴松之注含む。

    こういう記録上の話を載せるたび、曹操崇拝者から
    「演義フィクションに洗脳された偏見野郎め!」
    という狂った罵倒を浴びてきました。記録上の話なのに不思議なことです。
    さすが黒を白に、過去の犯罪をなかったことにするのが得意な団体の人たちだなあと感心します。よくも全員がコピーロボットのような完全に同じ言動ができるものです。調教だけは見事。

    何度も書いてきた通り私はフィクションを読んだことがないので洗脳されようがありません。一見さんはこちらをお読みください。→私の『三国志』の知識について

    実は私は自分にとって必要のない情報だったので、『魏志』の本文をじっくり読んだことはありませんでした。昔、図書館で読み流しただけです。
    特に冒頭は読み飛ばしたのか、記憶なし。笑
    今回初めて購入して翻訳のために向き合い、驚きました。
    曹操の少年期が細部までティオンそっくりだったため。

    ―― 一見さんには失礼、「ティオン」というのは自作品『遥かなる始まりの国』の登場人物です。
    ティオンのキャラクター設定は私のイメージにあるままの人物像でしかなく(多少意識的な脚色をしています)、何か他の素材を参考にしたということはありません。
    いっぽう『我傍に立つ』の敵方のほうは、本当に私にはイメージがないので、おそらくティオンのようなタイプだろうという勝手な考えで投影して眺めていたところはあります。

    しかし、まさかここまで似ているとは。血の気が引きました。
    “人格は細部に宿る”と前に書いた通り、細部に共通するものを感じます。
    特に「義務から逃げ回り快楽には貪欲」、そのため評価されずコンプレックスをこじらせるというあたり、私の小説の中のティオンそのものです。

    ただこれは、もしかしたら同じ障碍を持つ人は、外面的には似たような個性を持つように見えるというだけかもしれません。

    ティオンはサイコパスだっただろうと思います。遺伝子に関係ない、生まれつきの突然変異です。
    いっぽう曹操も、解説にも書いた通り生まれつきのサイコパスでしょう。
    曹操には現代研究によるサイコパスの特徴がそのまま当てはまります。
    「嘘つきちゃん」のニックネームには痺れました。サイコパス研究者が小躍りして喜ぶような一貫性、研究との一致ではないでしょうか?

    ※サイコパス最大の特徴は、幼少期から呼吸するように「嘘をつく」ことです。「嘘つきちゃん」というニックネームは、曹操が幼い頃から毎日のように嘘をついていて周囲が困り果てていたことを裏付けています。

    【詳しくは別館参照ください】曹操はサイコパスだったかどうか? 現代知識で分析してみた
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    ともあれ、古代人はナチュラルボーンだった


    この新たな発見を眺めて思うのは、古代では良くも悪くも、生まれつきの個性で生きた人が表舞台に立っていたのだなということです。

    近現代トップはサイコパス行動すら人工的だと感じます。
    残虐な世界トップたちも、思想や宗教の教義に従って義務としての殺戮を行っているだけ。
    元々サイコパスでも何でもない、むしろプライベートでは善良で常識的な人であることが多いようです。

    たとえばヒトラーはプロパガンダの天才で、尋常ではなかったことは確かですが、殺戮そのものは宗教の要請です。
    当時、ある宗教団体のトップがヒトラーを支持していたことは有名。ヒトラーは操り人形だったのではないか、という見方はある意味では正しいのでしょう。

    恐怖独裁を押し進めるお隣の大国、C国トップも学業に優れた元常識人です。(公表されている話が事実なら)
    しかし「虐殺構文」たる思想教義で人格を作り変えられ、自動的な殺戮マシーンと化している。

    そんな人工物たちよりはまだ、ナチュラルボーン・サイコパスの曹操のほうが確かに面白みはあります。
    私はどちらも軽蔑対象であることには変わりませんが、人工物はなおさら気持ち悪く感じますね。

    善人も狂人も、自然由来オリジナルの個性で生きていた古代世界は面白かったのかもしれない。

    ……なるほど、歴史ジャンルを好きになる人の気持ちが今初めて少し分かった気がします。
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