2020
Oct
29
-
みずのと~きのえ 『鬼滅の刃』で使われた階級名、実は上下と関係ない!
私も大好きな『鬼滅の刃』で唯一気になった、「みずのと階級一番下」設定。
鬼殺隊の階級名として出てくる「みずのと、みずのえ、かのと……きのえ」の本来の意味を、皆さんご存知ですか?
実は、上も下もない思想から出た名称なのです。だから階級として使うことに私は疑問。
しかも誕生日に結び付けられている名称なので、イジメの原因にならないかと若干心配しています。
もちろん炭治郎の精神をきちんと理解している子ならイジメなどしないと思いますが、階級名だけ一人歩きして誤解を広めることが心配です。
予防策としてネットに本来の意味を掲げておきます。SNSや掲示板等で「みずのと」生まれの人を見下す発言を見かけたら、ぜひこの記事を教えてください。
念のため言っておきますが、私は『鬼滅の刃』が大好きです。批判するつもりは毛頭ございません。
他の多くの大人たちと同じように、このたび映画の宣伝として行われた無料配信にて一気見し、俄か『鬼滅』ファンとなりました。俄かながら私もアニメ・コミック世代ですので深く刺さっています。
(以下、余談はカット)
本題です。このパーフェクトな作品で私が一点だけ気になったこと。
『鬼滅の刃』で最終選別を終えた炭治郎が、鬼殺隊の階級について説明を受けますね。
「階級は上から、“きのと、きのえ、ひのえ、ひのと……みずのと”。新入隊員のあなた方は一番下の“みずのと”です」
この名称は現実にありまして、漢字で書くとこうなります。
甲(きのえ)
乙(きのと)
丙(ひのえ)
丁(ひのと)
戊(つちのえ)
己(つちのと)
庚(かのえ)
辛(かのと)
壬(みずのえ)
癸(みずのと)
“きのえ、きのと”は訓読みで、音読みするとこうです。
「こう おつ へい てい ぼ き こう しん じん き」
音読みだと何だかお経か呪文みたいですけどね。“こうおつへいてい”なら誰もが聞いたことがあるのでは?
かつて成績表などでも「甲乙丙丁」くらいまでは使われたようですが、日本では確かに階級を表す用語としての使用が目立ちます。
しかし本来これは階級を示す意味はなく、上も下もありません。習慣的な順序として並べてあるだけです。実は、癸から始まっても戊から始まっても良い。
『鬼滅の刃』でこの「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」が階級を表す用語として使われたのは、大正時代・日本の習慣を表現するという意味ではとても正しいのですが、元々の意味からはかけ離れています。
本来の意味を理解していた昔の人ならまだしも、ベースの知識がない今の子供たちに教えると
「これって階級用語なんだ~」「“みずのと”って、一番下で弱いんだ~」
と完全に誤った解釈で覚えてしまいがち。
この点だけ私は気になり、誤解が広まるのを防ぎたいと思いました。
元々この「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」とは、陰陽五行の思想から生まれた“気(エネルギー)”の分類です。
詳しくご説明します。
古代東洋では、自然界のエネルギーは五つあり、それぞれが陰陽の二つに分かれると考えていました。陰陽はプラス・マイナスと考えると分かりやすいですね。
甲(陽+)乙(陰-) … 木のエネルギー
丙丁 … 火のエネルギー
戊己 … 土のエネルギー
庚辛 … 金のエネルギー
壬癸 … 水のエネルギー
このエネルギーの分類をまとめて、陰陽五行と呼びます。
ちなみに日本では、陽の気を「兄(え)」、陰の気を「弟(と)」と呼んでいます。つまり「きのえ」は、漢字にすると「木の兄」。「みずのと」は、「水の弟」のことです。
これを表現したのが陰陽五行図。五角形で表されます。
こちら↓は各気の名称や説明まで書かれた、超絶に分かりやすい図です。絵師さんに感謝:
なお、こういう気の思想も『鬼滅の刃』に取り入れられていますね。“水の呼吸”、“火の呼吸”など。あくまでもイメージですが。
陰陽五行の思想はあらゆる物や事象に割り当てられていますが、数を数えることにも使われます。
たとえば暦です。東洋歴では古代から、日付を表すのに「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」が使われてきました。
具体的に暦を見たほうが早いでしょう。
今月2020/10後半の暦は下画像の通りとなっていて、本日29日は「乙(きのと)の日」です。さらに言えば「丙(ひのえ)の月」であり、「庚(かのえ)の年」ということになります。
この通り、「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」の順番は変わらないので、日付を数えるには便利です。
ただし陰陽五行は順番に過ぎず、階級を表しているわけではありません。どの気が偉いとか、劣っているということは一切ないのです。
季節と同じ。
暦は一月一日から始まると思っている方は多いですが、正月などというものはある時代の人間社会限定の約束事に過ぎません。かつて正月が春だった国は多いし、夏でも別に構わないのです。一年の始まりは社会の変化によって変わります。
現実には自然界の季節に始まりも終わりもありません。
もちろん自然界の視点から見れば「春が偉い」とか、「冬が劣っている」という階級分けなどあるはずもないでしょう。愚かな人間界とは違うので。
上の五行図をもう一度見てください。ぐるっと円になっているイメージだから、上も下も無い。優劣も無い。それどころか、始まりも終わりも無いのです。
さらに付け加えると、五行のうち「絶対的優位」という概念はありません。
たとえば木は金に負けます。その代わり、金は火に負けます。火は水に負ける。水は土に負ける。木は土に負ける(繰り返し)……といった具合に、絶対的な勝者も敗者もいないのです。ジャンケンの五つ版だと考えてください。
この
「上下なし・優劣なし・始まりも終わりもなし」
の循環、完全公平こそ東洋思想の真髄と言えます。
なおこの陰陽五行思想は西洋からの輸入ではないとされているので、西の五芒星とは関係ないはず。
ですが、
“上下無し終始無し、完全公平、安定”
という思想概念は、神秘学上の「5」というシンボルが持つ意味にも不思議と通じます。宇宙や自然に適った世界の真理は一致しているということかもしれません。
関連
グランドクインタイル(五芒星形アスペクト)はどう解釈する? 他、占星術以外の五芒星シンボルの意味
いかがでしたか。
「甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸」に上も下も無い、ということが少しイメージできたでしょうか?
と言うことは、『鬼滅の刃』で一番下の階級とされた癸(みずのと)も、現実には一番強い場合があるということになります。
この五行思想は、東洋では暦に割り当てられていて占いにも使われています。
だからどうか正しく理解して、決して階級差別に使わないでください。
すべての気はただ個性の違いがあるだけであり、時と場合により最高の力を発揮できるのだということを覚えていて欲しいです。これは人の真実でもあります。
【ご自分の気を知りたい方、もう少し詳しく学びたい方はこちらへ】
古代五行占術 ~ 東洋思想の基礎、陰陽五行を解説(筆者サイトです)
鬼殺隊の階級名として出てくる「みずのと、みずのえ、かのと……きのえ」の本来の意味を、皆さんご存知ですか?
実は、上も下もない思想から出た名称なのです。だから階級として使うことに私は疑問。
しかも誕生日に結び付けられている名称なので、イジメの原因にならないかと若干心配しています。
もちろん炭治郎の精神をきちんと理解している子ならイジメなどしないと思いますが、階級名だけ一人歩きして誤解を広めることが心配です。
予防策としてネットに本来の意味を掲げておきます。SNSや掲示板等で「みずのと」生まれの人を見下す発言を見かけたら、ぜひこの記事を教えてください。
『鬼滅の刃』規格外ヒットに私も狂喜しています
念のため言っておきますが、私は『鬼滅の刃』が大好きです。批判するつもりは毛頭ございません。
他の多くの大人たちと同じように、このたび映画の宣伝として行われた無料配信にて一気見し、俄か『鬼滅』ファンとなりました。俄かながら私もアニメ・コミック世代ですので深く刺さっています。
(以下、余談はカット)
鬼殺隊の階級「みずのと、みずのえ、……きのと」は現実にある用語
本題です。このパーフェクトな作品で私が一点だけ気になったこと。
『鬼滅の刃』で最終選別を終えた炭治郎が、鬼殺隊の階級について説明を受けますね。
「階級は上から、“きのと、きのえ、ひのえ、ひのと……みずのと”。新入隊員のあなた方は一番下の“みずのと”です」
この名称は現実にありまして、漢字で書くとこうなります。
甲(きのえ)
乙(きのと)
丙(ひのえ)
丁(ひのと)
戊(つちのえ)
己(つちのと)
庚(かのえ)
辛(かのと)
壬(みずのえ)
癸(みずのと)
“きのえ、きのと”は訓読みで、音読みするとこうです。
「こう おつ へい てい ぼ き こう しん じん き」
音読みだと何だかお経か呪文みたいですけどね。“こうおつへいてい”なら誰もが聞いたことがあるのでは?
かつて成績表などでも「甲乙丙丁」くらいまでは使われたようですが、日本では確かに階級を表す用語としての使用が目立ちます。
しかし本来これは階級を示す意味はなく、上も下もありません。習慣的な順序として並べてあるだけです。実は、癸から始まっても戊から始まっても良い。
『鬼滅の刃』でこの「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」が階級を表す用語として使われたのは、大正時代・日本の習慣を表現するという意味ではとても正しいのですが、元々の意味からはかけ離れています。
本来の意味を理解していた昔の人ならまだしも、ベースの知識がない今の子供たちに教えると
「これって階級用語なんだ~」「“みずのと”って、一番下で弱いんだ~」
と完全に誤った解釈で覚えてしまいがち。
この点だけ私は気になり、誤解が広まるのを防ぎたいと思いました。
「みずのと~きのえ」の本来の意味は?
元々この「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」とは、陰陽五行の思想から生まれた“気(エネルギー)”の分類です。
詳しくご説明します。
陰陽五行とは
古代東洋では、自然界のエネルギーは五つあり、それぞれが陰陽の二つに分かれると考えていました。陰陽はプラス・マイナスと考えると分かりやすいですね。
甲(陽+)乙(陰-) … 木のエネルギー
丙丁 … 火のエネルギー
戊己 … 土のエネルギー
庚辛 … 金のエネルギー
壬癸 … 水のエネルギー
このエネルギーの分類をまとめて、陰陽五行と呼びます。
ちなみに日本では、陽の気を「兄(え)」、陰の気を「弟(と)」と呼んでいます。つまり「きのえ」は、漢字にすると「木の兄」。「みずのと」は、「水の弟」のことです。
これを表現したのが陰陽五行図。五角形で表されます。
こちら↓は各気の名称や説明まで書かれた、超絶に分かりやすい図です。絵師さんに感謝:
画像作者:uatelierさん
なお、こういう気の思想も『鬼滅の刃』に取り入れられていますね。“水の呼吸”、“火の呼吸”など。あくまでもイメージですが。
暦での使われ方
陰陽五行の思想はあらゆる物や事象に割り当てられていますが、数を数えることにも使われます。
たとえば暦です。東洋歴では古代から、日付を表すのに「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」が使われてきました。
具体的に暦を見たほうが早いでしょう。
今月2020/10後半の暦は下画像の通りとなっていて、本日29日は「乙(きのと)の日」です。さらに言えば「丙(ひのえ)の月」であり、「庚(かのえ)の年」ということになります。
カシオkeisan 干支カレンダー
上もなく下もなく、始まりも終わりもない
この通り、「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」の順番は変わらないので、日付を数えるには便利です。
ただし陰陽五行は順番に過ぎず、階級を表しているわけではありません。どの気が偉いとか、劣っているということは一切ないのです。
季節と同じ。
暦は一月一日から始まると思っている方は多いですが、正月などというものはある時代の人間社会限定の約束事に過ぎません。かつて正月が春だった国は多いし、夏でも別に構わないのです。一年の始まりは社会の変化によって変わります。
現実には自然界の季節に始まりも終わりもありません。
もちろん自然界の視点から見れば「春が偉い」とか、「冬が劣っている」という階級分けなどあるはずもないでしょう。愚かな人間界とは違うので。
上の五行図をもう一度見てください。ぐるっと円になっているイメージだから、上も下も無い。優劣も無い。それどころか、始まりも終わりも無いのです。
さらに付け加えると、五行のうち「絶対的優位」という概念はありません。
たとえば木は金に負けます。その代わり、金は火に負けます。火は水に負ける。水は土に負ける。木は土に負ける(繰り返し)……といった具合に、絶対的な勝者も敗者もいないのです。ジャンケンの五つ版だと考えてください。
この
「上下なし・優劣なし・始まりも終わりもなし」
の循環、完全公平こそ東洋思想の真髄と言えます。
追記 西洋の五芒星とは関係ないはずですが…
なおこの陰陽五行思想は西洋からの輸入ではないとされているので、西の五芒星とは関係ないはず。
ですが、
“上下無し終始無し、完全公平、安定”
という思想概念は、神秘学上の「5」というシンボルが持つ意味にも不思議と通じます。宇宙や自然に適った世界の真理は一致しているということかもしれません。
関連
グランドクインタイル(五芒星形アスペクト)はどう解釈する? 他、占星術以外の五芒星シンボルの意味
まとめ 癸も一番強い時がある
いかがでしたか。
「甲 乙 丙 丁 戊 己 庚 辛 壬 癸」に上も下も無い、ということが少しイメージできたでしょうか?
と言うことは、『鬼滅の刃』で一番下の階級とされた癸(みずのと)も、現実には一番強い場合があるということになります。
この五行思想は、東洋では暦に割り当てられていて占いにも使われています。
だからどうか正しく理解して、決して階級差別に使わないでください。
すべての気はただ個性の違いがあるだけであり、時と場合により最高の力を発揮できるのだということを覚えていて欲しいです。これは人の真実でもあります。
【ご自分の気を知りたい方、もう少し詳しく学びたい方はこちらへ】
古代五行占術 ~ 東洋思想の基礎、陰陽五行を解説(筆者サイトです)
- 関連記事