NHKスペシャル『アジア巨大遺跡~始皇帝陵』は、中華帝国の広報ビデオ?

吉野 圭

NHKスペシャル『アジア巨大遺跡』の始皇帝陵編を見ました。
公式 http://www.nhk.or.jp/special/asia-iseki/warriors.html

映像は素晴らしく、私も始めワクワクしつつ見ていました。

兵馬俑は何度見ても素晴らしい。
2200年前に実際生きていた人の顔・体格がそのまま再現されているところが素晴らしいです。東洋にありがちなデフォルメ、空想表現は一切なしのリアリティ。一つとして同じ物がない。一人一人の姿形を手抜きなく写し取った職人の技に痺れますね。
(あのリアルさはギリシャの彫像の影響を受けたのでは?という説があるようです。確かにそうだと思いますが、無名の「一般的な容姿」の人々の顔をそのまま写し取ったところがギリシャ彫像よりも素晴らしい)

今、東京国立博物館で「始皇帝と大兵馬俑」展が開催されているそうです。
私もかつて一度だけ国立博物館にて展示されていた兵馬俑を見たことがあります。古代の人がタイムスリップで蘇ったかのような迫力に感動しました。
日本での展示だと、至近距離で見られることもいいですね。
本当に人が隣に立っているように感じられます。とても貴重な体験なのではと思います。

さらに考えてみれば、過去、中国に生きていた人たちも誰一人この兵馬俑を見ることができた者はいません。始皇帝の時代の職人たち以外。
なにしろ2000年間、土の中にあったのですから。
たとえばこれは空想ですが、前世で自分が中国に生きていたのだとしても兵馬俑を見る機会はなかったし、現実に存在することさえ知らなかったわけです。今より遥かに時代が近かったにも関わらず……。
兵馬俑を目にすることができるのは現代以降に生きる我々だけ。
だから凄く貴重なことだと思います。
この時代に生きている僥倖を感じ、私などは痺れてしまいます。



ところで上のNHKスペシャルを見ていて非常に気になったのですが、始皇帝の行った残虐行為には一切触れることなく、ただひたすら
「始皇帝は世界で最初に広大な領土を統一した、素晴らしく偉大な賢王だった!」
絶賛していたのはいかなる理由で?

番組曰く、
「始皇帝は平和のために天下統一した。統一後も、全国を何度も巡業して平和の大切さを説いて回った(平和と人権を愛する偉大な王だった)」
とのことだが……。

始皇帝が実際どのような志をもって天下統一したのか、そのために大虐殺は許される行為だったかどうか?
私は、そんな歴史的な考察を云々したいわけではないのです。

非常に気になったのは、この共同制作番組は現代に置き換えた政治的な目的で始皇帝を看板に使っているという点です。
つまり、
「始皇帝を見よ! 始皇帝を崇めよ! 中華が世界統一するのは始皇帝と同じく、平和のためです。だから台湾は併合しますよ、チベットは当然に中国の物ですよ、アジア全土は既に中国の所有物です。日本も間もなく中国に併合されます。ありがたく思えよ日本人」
というメッセージですよね。

始皇帝の行った粛清、大虐殺、焚書、強制労働……etcといった血塗られた事実を伏せて、ただただ始皇帝の素晴らしさだけを宣伝する偏った番組の作り方。
どこかで見ましたね、こういうの。
そう、IS(自称 )の広報ビデオそっくりです。

始皇帝に殺された人々の死体を映せよ、道端に転がる首や地中に放り込まれた躯を描写しろよ。
こんな偏った中華帝国の宣伝ビデオを垂れ流しするとは、NHKは〇〇ステーションのようだ。これこそBPOが注意すべきだと思うが。


この番組を見た平和ボケの日本人が、何も分からずにまた
「始皇帝スバラシイ! 始皇帝萌え萌え~」
と吠えることが目に見えているので恐ろしく思います。

最近、漫画『キングダム』などでまた始皇帝の人気が上がってきていますね。あのマンガは面白くて私も大好きなのですが、どうして架空人物にしてくれなかったのか。個人的には残念です。

『キングダム』が始皇帝がらみだったとしても、フィクションとして冷静に受け取れる民族なら構わないのです。芸術は芸術、私は『キングダム』を作品として素晴らしいものと思う。
でもこの国にはそんな区別がつかない人が存在します。一部に本気でフィクションと現実の区別がつかない人がいて、カルト教の信者のごとくフィクションを信仰する。
特に今までのイメージと逆の話は、ただそれだけで事実と思い込む傾向がありますね。
(たとえば『蒼天航路』。あれほど嘘のフィクションはないのだが、現実そのものだと思っている日本人は多い。彼らって、記録は一切見ないんですねぇ。記録を知らないくせに偉そうにしている人、多いよね)

日本人はどうも逆説フィクションが好きなよう。
「一般的に極悪非道と思われている人物(団体)を再評価する自分って、偏りがなくて、賢~い!」
と“知的な自分”に酔ってしまう左タイプの人が多いのか。
…たとえばあの番組の人たち(『正義を疑え』)のように…。
これは実は、非常に危険なことだと思います。

「歴史考察は知的な趣味。お遊びに過ぎない」
と日本の歴史マニアたちは思っているのでしょうか?
あるいは、始皇帝を再評価することが「アジアはローマ帝国に優っていた。アジア人は西洋人より優等だ」とアジア全体の評価を高めることに繋がると思っているのか。
残念、その「アジア」の中に日本はいないというのに。
始皇帝に心酔することは、ただ現代中国の野望を認めることに過ぎず、日本民族を彼らの奴隷として差し出すことを意味します。売国行為です。

幼い頃から洗脳教育されて情報制限されている中国在住の人が「始皇帝スバラシイ」と言うなら仕方ないと思うが、どんな情報でも手に入るはずの日本人が、中華帝国の宣伝ビデオを鵜呑みにして
「始皇帝は素晴らしい! 日本もぜひ統一しちゃってください!」
と自ら犠牲になることを願うとは。


現代の自称知識人たちは相変わらず、「始皇帝は素晴らしい」と言ったり「アメリカ様に従え」と言ったり。
どちらにしても、「長いものには巻かれろ」と言う自分が知的だと思い自説に酔っている。気持ちが悪い。
せめて独立国家としての自覚くらい持って欲しいもの。

*
おそらくこの記事しか読まない人がほとんどだと思うので書いておきますが、当ブログ筆者は以下のような者です。

・右でも左でもない
・どこの国の味方でも敵でもない(自分が今住んでいるここは守りたいと思っている)
・平和が一番と思う
・とにかくどこの国でも人物でも、他人の平和を乱し人権抑圧する横暴なエゴイストが大嫌い
・そのエゴイストに「萌え萌え」叫んで心酔するバカはさらに嫌い

※バカとは知識がなかったり学歴がない人のことではなく、無考えな人のことです。自称知識人のバカは最も嫌いですね
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