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善悪の根幹を破壊する悪魔 『MONSTER』ヨハンとは何者だったのか

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(C)MONSTER,浦沢直樹

昨夜は『鬼滅の刃』映画が初めて地上波で放送されましたね。今頃、ネットは鬼滅の話題で盛り上がっていることと思います。
こんなときに古いアニメの話をするのも何ですが、『MONSTER』最終話まで観ました。このアニメを観ながら思っていたことをメモします。

『MONSTER』前回の紹介記事

〔ネタバレあり〕 これから観る予定の方はご注意ください。


作品としての素晴らしさ


先にレビューから。

古いアニメながら、映像作品としてのクオリティが高くて堪能できました。丁寧かつ誠実な仕事には感動を覚えます。
脚本、場面展開に手抜きがなく、原作へのリスペクトを感じます。

時間をかけて描かれたのであろう画は美しかった。
音楽のセンスも良い。
オープニング、エンディング、ともに作品の世界観を引き立てることに徹している。夜中に放送されたアニメだからかもしれませんが、人気を得て収益を上げることをあまり考えていない、芸術に資す誠実さを感じました。
声優さんたちも素晴らしかったですね。

メインストーリーは、もともと漫画でも面白いと思いましたがアニメではさらに引き込まれました。
重厚でありながらスピード感のある展開で、「謎が解ける場面を観たい」という欲求で虜になってしまいます。

私はふだん殺人ミステリーに興味を持たないのですが、これは夢中で観てしまいました。謎解きで物語に入り込んでしまうことは、自分としてはとてもめずらしいことです。
(ミステリーは先が読めてしまうため、冒頭で興味を失いがち。殺人事件の謎解きを愉しむという設定にも興味が持てないし。しかしこれは現実の歴史や人間心理と絡めているため惹き込まれた)

メインストーリー周辺の温かいドラマ


“謎解き”という一般受けしそうなエンタメ要素もありつつ。
この作品の魅力は、インストーリーの間に差し挟まれている小話のほうにあると私は思います。
殺人犯に仕立てられ逃亡する主人公・天馬が、旅の途中で様々な人と出会い心を交わす。人間味溢れ、心温まるそれら一つ一つの小さな物語が、まるで古い映画やドラマのように完成度が高いのです。

「まるで古いヨーロッパ映画のような」と表現するのは、もしかしたら褒め言葉として良くないのかもしれません。
でも作者の映画に対するリスペクトの表れだということが分かるので、賛辞としてこう述べました。
きっと作者は子供の頃からヨーロッパやアメリカの番組が好きでたくさん観てきたのでしょう。メインストーリーが古典ドラマ『逃亡者』のようであるのは、分かりやすいリスペクトです。作者が子供時代に『逃亡者』などを夢中で観ていたのだろう、そんな思い出が伝わってきて温かい気持ちになります。

人の思い出を味わうことこそ創作の醍醐味だと思います。
だからこのアニメのような、思い出へのリスペクトを感じる作品が私は好きです。

結末は残念


肝心のメインストーリー結末は――

たぶん多くの人が抱く感想と同じく、私も「残念」と思いました。辛口ですみません。

【ここからネタバレです】

伏線を回収できなかったのは残念ですね。
二重人格の設定は忘れてしまったのか? それとも勘違いだったということでスルーですか。だとすればどこかで「勘違いでした」という言及があるべきだけど。
キンダーハイムでの虐待とは、具体的に何だった? ヨハンの計画ってあんなもの?
等々。

謎や秘密はぼんやりとは示されるのですが、伏線を回収しきれていないので謎解きのカタルシスが得られない。それが「モヤモヤ」を与えていると思います。

おそらくこの原作は設定だけ固めて連載を始めた種類のものだろうと思います。
結末は書きながら考えるパターン。つまり読者の反応を見て決めることにしていた、のでしょうきっと。
「ヨハン二重人格」などの伏線が回収されなかったのは、その時点では幼少期の殺人事件もアンナ(ニナ)が行っていた・ヨハンと記憶が入れ替わっていたという結末にする予定だったところ、察知した読者たちから「ニナを殺人犯にするな!」というクレームが殺到したため変更した。そのせいで、伏線が浮いてしまったのではないか? などと想像しています。

設定だけで始めるパターンは日本の連載漫画にはよくあることではないでしょうか。
だから、「めちゃくちゃ面白かった記憶はあるけど結末は知らない、思い出せない」という漫画が多いのでしょう。

物語とは過程を楽しむものだし、読者とともに創る作品というものも有りだと思うので、私はこの手法を否定しません。エンタメ漫画ではそのほうが良い場合もある。
しかし、『MONSTER』の重厚な世界観では合いませんでしたね。
せっかくシリアスで実際の歴史もテーマに入れているからこそ、こういう曖昧なぼかし方は罪にもなる。現実の歴史で殺された人々が気の毒。設定の細部と結末に責任を持つべき種類の作品なのでは。

この点、前記事でレビューした『BANANA FISH』とはちょうど反対です。
『BANANA FISH』はマフィアとの闘いが根幹テーマに必然を与えないので、細部をもっとぼかして良かった。
逆に、『MONSTER』は双子が体験した過去とヨハンの生む計画こそが根幹テーマだったので、細部を書き込んでほしかった。
つくづく推しいなあと思います。

悪意の存在を知らない日本人


『MONSTER』で最も真面目に描いてほしかったのは洗脳実験の詳細です。
東欧~ソ連の社会主義国でいったいどのような非人間の犯罪が行われてきたのか、社会主義・共産主義とはどれほどの悪なのか。後世の子供たちに伝えるためにも、そこは手を抜かず真剣に歴史と向き合って描くべきでした。

結局は「二人のトラウマの原因は母親だった」で終わらせるのはチープ過ぎる。
「一番怖いのは母親なのよね」などとしたり顔で納得するのは、カルト思想の闇を知らない日本人くらいではないでしょうか。

他にもたとえば…
子供たちに恐怖の実験を施していた施設の責任者が、体制崩壊とともに罪を悔いて子供に愛情を注ぐ優しい人格者へ変わる。
子供の心を壊して悪魔に育てる絵本を創作した作者も、老いてから罪に苛まれ静かに暮らしている。等々

このような甘い展開は現実にはあり得ないと言えます。
命令されて残虐なことをしていた兵士ならともかく、進んで洗脳システムを創り虐待を愉しんでいた首謀者が、本心から変わることはあり得ない。

サイコパスは死ぬまでサイコパス。
地獄のリーダーたちの心の闇は、「母親によるトラウマ」などで説明できる程度のものではないというのに。

何も考えず、安易な性善説に立つ人が多過ぎます。
無知、思考停止で「悪い人なんかこの世にいない」という願望にしがみつく。
自分が善人だけの世界に生きたいと願うことは構わないが、そのために現実を歪め、犯罪を「見て見ない振り」「無かったこと」にする。それは被害者をその足で踏みにじる行為で、“共犯”とも言えます。

ある意味でこの漫画の結末は現実の日本人を正しく描いていると思いました。
今の日本人は自分をごまかして悪魔を助け、大量の被害者を生み出している共犯者です。

共犯の例:
第二次大戦中~現在にかけて悪魔国家を援助し続け、虐殺の手助けをしてきた日本政府。
虐殺王に心酔し信者となり、虐殺を正当化する兵隊として使われている愚かな日本人たち

天馬とヨハン、あなたはどちらに共鳴するか


ここからレビューではなく個人的な想いをメモしていきます。

結末については辛口となってしまいましたが、途中までは本当にずば抜けて面白い作品でしたし共鳴もしました。

途中までの天馬には、私も自分を重ね合わせて観てしまいました。
あれほどの根性も能力もありませんが、「これ以上の被害者を生まないために奴を止めなければ」と言ってヨハンを追い続ける気持ちは私も同じです。

よく私のことを「前世の復讐にかられた鬼」だと思い込んでいる人に遭遇します。私が復讐心だけで動いていると思ってらっしゃる? 発想が陳腐なのですよ。まったくどこの共産党員のマンガに洗脳されているんだか、笑。
私を動かしている気持ちは復讐などではなく、天馬と同じ「これ以上の被害者を生まないために阻止せねば」です。

初めて『MONSTER』を読んだ当時は、私にとって天馬は遥か遠くに見えるヒーローでした。憧れではあるけどとうてい届くはずのない本物の英雄。
しかし今は、天馬の背中が近付いたことに気付いて驚いています。
敵側に「妄想、妄想」と指差され、潰されそうになりながら独りで戦っているところだけ(笑)が共通項ですがね。
とにかく、若い頃はまさか自分が天馬の背中を追いかけることになろうとは夢にも思っていませんでした。

“人生はチョコレートの箱のようなもの、開けてみなければ中身は分からない”(フォレスト・ガンプ)
です、まさに。

ところで『MONSTER』では、ヨハンのほうへ共鳴して心酔・崇めてしまう人はけっこう大勢いるのでは?
美形で高知能のサイコパスは何故か、現代日本人の憧れの的。
あのようなタイプが大好きで、崇拝の対象とする人が多い。自分の欲望を満たしてくれる素晴らしい神様だと思って崇める。
残念ながらこの国には今、小さなサイコパスがとても多い気がします。

私のこともヨハン側、日本人の想像する「創作上のサイコパス」としてイメージしている方は絶対いる気がしますね。
確かにヨハンは同世代だし(…関係ない、笑)、現実に冷たいサイコパスのように見られることは多々あります。
ニナのように自分こそモンスターではないかと考えたこともあります。
しかし蓋を開けてみればダサい「弱虫テンマ」側でした。
これからもきっとダサく生きていくのでしょう。最終的に、天馬と同じ曖昧な結末を選ぶことのないようにしたいと思います。

ヨハンとは何者だったのか


今回このアニメを観ながら私は『曹操ってどんな人?(別館)』という記事を書いていました。そのため偶然にも、曹操とヨハンを並べて眺めることになった、とは前にも書きましたね。

おかげで
「サイコパスの定義は」
「悪とは何か」
「悪魔は存在するのか」
等々、昔から考えてきたことを改めて考える機会を得ました。

史実曹操は現代精神医学上のサイコパスで間違いないでしょう。
彼ら現実のサイコパスは単純明快な本能で私利私欲を求め、気に食わない人を殺しているだけのこと。動物と同じです。

ヨハン・リーベルトなどのような現代の魔物と比べれば分かります。
曹操には闇がありません。同時代に生きていれば憤りを覚えますし、街をうろつく肉食動物と同じように行動を止めなければと思いますが、動物に深い闇があるわけがないのです。ただ「食べたい」「殺したい」、これだけです。
むろん、善か悪かで言えば間違いなく悪ですけどね。(地上の価値観において)

いっぽうヨハンに象徴される現代の魔物には深い深い闇があります。
闇の底から湧いて出てきたような汚らわしさ、嫌らしさを存在自体が持っている。

『MONSTER』が素晴らしく上手だったのは、この“魔物”の表現。きれいな容姿をしていても悪を考えているから何とも嫌らしい顔になる、人をゾッとさせる表情がうまかった。
現実の歴史資料などから、あの嫌らしい者たちを観察して抽出した人物像なのだろうなと思います。

私は「このヨハン・リーベルトは何者に相当するのだろう?」と考えながら話を追っていました。
ヨハンはただの「サイコパス」とも言い難い。
幼少期のトラウマを要因として後天的にサイコパスとなった、という設定だったようですが、彼の悪魔性にはトラウマさえも必要がなかったという矛盾もある。

やはり、ヨハンは“悪魔”としか表現しようがない存在として描かれたのだろうと感じます。作中では悪魔と呼ぶのを避けて“怪物”と呼んでいますが。

そしてそのような悪魔はグリマーが叫んだように、
「善悪の根幹を破壊した」
結果として、今も現実に地獄から引き出されていると思います。


悪魔は存在するのか、悪とは何か


何度か書いてきた通り、私は「悪魔という生き物は存在しない」と考える者です。キリスト教徒ではないのだから当たり前。

ただ闇の次元に永く棲む、“地獄の底(地上から離れた負の極)”の主のような存在はいると感じます。
そのような究極の闇から引き出されて生まれた魂は、ヨハンのように地上で地獄を実現しようとするでしょう。

地獄とは、嘘が真実を覆い尽くす世界。
善悪(正義と悪)は反転され、心は踏みつぶされ、人の絆は奪われ、精神が殺される。
“魂の殺人”によって思考停止した人々は誰も信じることがなく、お互いを殺し合って喰い合う。

まさに今、あのカルト思想が実現しようとしている世界です。
このような地獄を求めること、そのための行いが地上における本当の悪だと思います。

決して単純に殺人だけが悪なのではないのですよ。
もちろん、悪癖を持つ魂は必ず平気で殺人しますので、殺人事件は彼らを見つける手がかりとなりますが。


グリマーさんの心の叫び


最後に、この作品中もっともリアルで正しいと思った台詞を引用しておきます。

キンダーハイムで実験対象として育ち、感情を失い、二重人格となったグリマーさんが心を取り戻した瞬間に叫んだ台詞です。

あんたがやったことがどれほどの罪なのか、人間の善悪を破壊するということが何を意味するのか、人間のなかの怪物を目覚めさせることで何が起きるのか!

…人間は、人間は食事をうまいと思わなければならない。
休日のピクニックを楽しみにしなければいけない。
仕事が終わった後のビールがうまいと思わなきゃいけない。
人間は…、人間は……、子供が死んだとき心の底から悲しいと思わなければいけない。

第70話 「殺戮の町」より。

欧州の社会主義国で行われていたことは、まさにこの「善悪の根幹を破壊」して感情を奪うという悪事でした。
そしてその犯罪はC国で文革という大虐殺を引き起こし、今も地上を大殺戮で埋め尽くすべく着々と遂行されています。

今回はアニメでしたが、どうかこのような創作をきっかけとしてでも歴史を知り、現在進行している事態に気付いていただきたいです。

“善悪の根幹”を破壊してはなりません。
“人と人との絆”を否定してはなりません。
“心、感情”を失ってはなりません。


もし、あなたが今この現実で行われている洗脳(メディアで流され続けている嘘)を受け入れるなら、明日のモンスターはあなたです。
家族を殺すことに快楽を覚えて歓喜の涎を流しながら、地獄の底へ転がり堕ちていくことになります。
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