神秘・占星術

    吊るされた男と、軍神オーディン

    コメントでタロットの話が出ましたので、一つだけサビアン占星術のなかでタロットと関わり深いシンボルをご紹介させていただきます。

    蟹座2度に、『広く平らな場所の上につるされた男』というシンボルがあります。(訳:松村潔)
    これはかつて松村先生が書かれた書籍(ルディア版の訳)では、
    『魔法の絨毯に乗った男が、大地の巨大な区域を飛び回る』
    となっていました。

    どちらの表現でも、このシンボルの解釈は
    「高い位置の視点を手に入れて、広い視野を得る」
    です。

    『吊るされる』なんて、なんだか怖いですよね。
    これでは何か刑に処されているようであり、不吉なイメージが湧いて「悪いことが起きる」だけの解釈になってしまいそうなので、一般的には後者の『大地の巨大な区域を飛び回る』のほうが解釈のイメージが正しく湧きやすいと思います。

    ただ、『吊るされた男』と聞けば、タロットをやる方ならピンとくると思うのです。
    これは不吉なだけのイメージではない。
    そう、タロットNo.12、そのまま『吊るされた男』です。
    このカードは確かに、「処刑」「死刑囚」という怖い意味があるのですが、カードが正位置なら“自己犠牲”などのほかに“逆転の発想・アイディア”を表します。

    実はこの、“逆転の発想”こそが「吊るされた男」の正体なのです。

    「吊るされた男」は確かに刑の執行で逆さ吊りに遭っているのですが、男は逆さになることで世の中を逆転して見ることが出来、それ故に“逆転の発想”を得ます。

    古典的なカードの絵を見ますと、吊るされた男は両肘を突き出し、足を組んだ姿勢で楽しげに刑に遭っています。
     turusare.gif
    ウェイト版、パブリックドメインより

    この奇妙な絵は、男の体の形で「五芒星」を表しているのです。

    「五芒星」は何かと言うと、主に魔術や軍事を表します。
    ※五芒星を「悪魔のシンボル」と主張している宗教が存在しますが、これはその宗教が異教徒たちに五芒星や六芒星のレッテルを貼って迫害したという歴史に拠ります。シンボル学としては五芒星を「悪魔」と読むのは完全なる誤りです。逆さ五芒星も同様に、イスラム教教祖(マホメット)を誹謗中傷したレッテルです。

    ――さて、では何故、タロットの12番に「魔術」とか「軍事」が出て来るのか?
    というわけで探ってみましたら、北欧のオーディンに行きつきました。

    オーディンは北欧の軍神で「魔術・智慧・戦争」をつかさどります。

    そしてなんと、上のタロットカード『吊るされた男』とはオーディンそのものを表していたのです。

    オーディンはルーン文字の秘密を得るために、ユグドラシルの木で首を吊り、グングニルに突き刺されたまま、九日九夜、自分を最高神オーディンに捧げたという(つまり自分自身に捧げた)。この時は縄が切れて助かった。この逸話にちなんで、オーディンに捧げる犠牲は首に縄をかけて木に吊るし槍で貫く。なお、タロットカードの大アルカナ XII 「吊された男」は、このときのオーディンを描いたものだという解釈がある。
    ウィキペディアより
    このオーディンはまた、「高座につく者」と呼ばれています。
    自ら吊るされて片目を失うという犠牲をはらってまで高度な智恵を手に入れ、高い視点の発想を得ることが出来た者ということ。

    つまりオーディンの物語がそのまま、サビアンシンボルの解釈
    「高い位置の視点を手に入れて、広い視野を得る」
    に投影されているわけです。

    だとするなら、一見分かりやすいようだが遠回しな 『魔法の絨毯に乗った男が、大地の巨大な区域を飛び回る』 などとするよりも、『吊るされた男』と言われればタロットを知っている方ならそのままダイレクトに解釈へ直行することが可能なはずです。

    蟹座2度はたまたまタロットそのものだったので分かりやすかったのですが、同様に、サビアンシンボル解釈にはタロット等の知識が役立つことが多々あるはずです。
    そのためにも、なるべくなら原文に近い訳を見たほうが良いのかな、という気がします。


    なお、この蟹座2度について深く調べたのは、たまたま自分のホロスコープで重大なポイントにこれがあったからです。
    ※筆者のネイタル、多重ヨッドの一点を成す星に蟹座2度がある。
    (速度の遅い惑星であり、生年月日が近い人は皆この度数を持つことになりますので、アスペクトに何か特徴がない限りさほど気にするものではないと思います。以下の「戦争」などの解釈は私のホロスコープに限ったことですので、蟹座2度をお持ちの方の全てが気に病む必要はありません)

    私のホロスコープは全体的に戦争と関わりがあります。
    ただその星だけは、松村先生の初期の書籍で、『魔法の絨毯に乗った男が、大地の巨大な区域を飛び回る』と書かれていたので戦争とは関わりのないものだと長年思っていました。

    ところが、調べてみると 軍神オーディン だという。

    軍神……ですか。
    しかも魔術まで使う知恵者の扱い。
    結局、どこまでも過去生を表していたのだと知り、しばらく凹みました次第です。

    それにしても、このシンボルの真相を知って改めてサビアン占星術は凄まじく当たるのだと確信しました。
    皆様、私からお送りした鑑定について「なんとなく当たっているかも? 当たらないかも?」程度に思われているでしょうが、自分でも気付いていない過去生を表していることがきっとあると思います。
    私だって、過去生の記憶がなければ「軍神」のシンボルを突き付けられても
    「はあ?ナンノコッチャ。全く当たってないよ、自分は軍事と関係ないし」
    と思っていたでしょうから。
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