2018
Apr
02
-
占星術ハウスの意味、現代と古典の違い
フォームからリクエストいただいたテーマです。
引用させていただきます。
>現代では商業目的で意味が歪められているというお話をされている
そうですね、以前書いたことと重複すると思いますが、簡単に振り返ってみます。
まず最も分かりやすい「商業目的での占星術の歪み」は、太陽を自分自身と見て解釈することでしょう。
現代で西洋占星術を習う者は必ず、太陽サインが人の「基本性格」を表すのだと徹底的に教えられますね。
これは天文学の常識が天動説から地動説へ変わった時代に、占星術師たちが「占星術は天文学である」という看板を掲げ続けるために太陽中心主義へ転向したことが始まりだと思われます。
経済発展が目覚ましかったアメリカで、商業誌が「太陽星座占い」を取り上げるようになってから一般にも浸透しました。
太陽星座占いは出生時間が分からなくても誰でも簡単に占えるため、大流行したようです。
小難しいために廃れる一方だった占星術が、この時代から「稼げるビジネス」に変わりました。
今も占星術が「ビジネス」として成立するためには、出生時間が分からなくても占える太陽にこだわらなくてはなりません。
だから、現代の占星術師たちが「出生図の太陽=その人自身」という話を本気で信じているかどうかは分かりませんが、否定する占星術師はいないはずです。(西洋占星術師は。否定したら自分の商売スペースとなる世界で、居場所を失うため)
――以上が「現代占星術は商業主義で歪められている」という話の基礎です。
ここまではけっこう有名な歴史事実なので、太陽中心主義を唱えた近代の占星術師たちの名や、アメリカで太陽星座占いを流行らせたジャーナリストの名を知りたい場合は専門書籍で調べてみてください。
ハウスについての話は、上の歴史に付いてくるものです。
もともと古典の占星術ではアセンダントサインが最も重視されていたことはご存知かと思います。
実際に古代では、アセンダントサインから始まる第1室を「容貌」ではなく「本人自身(国家など集団の場合も、その集団自身)」と解釈していたようです。
インドや中国など、古典のまま現代に伝わった占星術がそのように解釈していることから、西洋でも古代はアセンダントを本人・集団自身と見ていたことが推測されるわけです。
しかし外国にこのような痕跡が残っているにも関わらず、現代西洋占星術では、アセンダントサインを「他人からの印象・顔などの見た目」と決めつけるだけで本人自身とは決して解釈しません。
アセンダントサインは性格としては完全無視されます。
同じく、第1室も「自分自身」と呼ばれてはいますが、何故か性格などに関わるプライベートのハウスとしては読まれずに「他人に与える印象」として読まれる傾向があります。
これは上に書いた通りの理由で、現代占星術では太陽が「本人自身」でなければならないため、古典通りアセンダントサインや1室を「本人」として読むと矛盾してしまい困るからでしょう。
このような商業都合での解釈変更を、「歪み」と呼ばないで他に何と呼べばいいのか私には分かりません。
なお、他のハウスについては現代でも古代でも解釈はほぼ変わらないようです。
第12室だけ、古代人が「容貌」とも解釈していたことが大きな違いでしょうか。これは現代占星術師たちが第1室を「容貌」と読むことに決めたので、第12室から「容貌」の解釈を削除しなければ都合が悪かった、という感じでしょうか。
まるで昨今政界で話題の文書改ざんのようですね。笑
古典ハウス解釈の資料は中国の『七政』より。
すみません、参考にしたURLを失ってしまいましたが、ハウス解釈は当ブログこちらの記事にてメモしています。確か、ドラゴンヘッドの解釈として私が直したものです。
http://ksnovel-labo.com/blog-entry-402.html
分かりやすく現世の出来事として書き直すと、
最後に込み入った話になりますが、私は「古典だけが絶対に正しい」と思っている者ではありません。
もし古典だけが正しいとするなら、インド占星術のようにサイデリアルで、土星までの惑星しか使わず、アスペクトは無視して惑星品位のみで占うべきです。実際、古代の占星術とはそのようなものです。
でも実際の鑑定でそれでは当たらないケースが多いと感じたので、私は太陽中心主義以外、近現代の占星術手法に従っています。
占星術は史料絶対の歴史学でも、教義に従う宗教でもないはず。
(これも過去記事と重複しますが)
過去の説を絶対信奉する必要はありません。また、絶対信奉すると誤ります。
何故なら古典にも誤った解釈があるはずだからです。もし誤っていると分かったなら修正していけば良いし、もっと当たる手法が出たら取り入れていけば良いのです。
ただ、手法を取り入れる場合はあくまでも「当たるかどうか」が基準になります。
新手の手法を次々に取り入れることが正しいわけでもないし、ヘリオセントリックや13星座占いのように現実天体に合わせれば必ず正しくなるというものでもないはず。
たぶん、占星術は言語学に最も近いものです。
人類の先輩方が天体という言語を使って何を表わそうとしているのか、手探りで読み解いていくしかないのだと思います。
(あるいは医学。既にある肉体という物を分析し、手探りで何が正しい治療法か探っていく)
しかしこの手探りの世界で一つだけ確かに言えることは、人間の地上社会の都合で歪めた解釈は必ず誤りであるということです。
結果に背き、自己都合で文書を改ざんするお役所仕事のようなことをすべきではないでしょう。
……と、長くなってしまいましたが、こんな感じで回答になりますでしょうか?
【20/5/29 占星術サイトでまとめました】 アセンダントは容貌を表さない! 古典で知る、ハウスの本当の意味
引用させていただきます。
質問というか要望なのですが、占星術におけるハウスの意味についての記事が読みたいです。現代では商業目的で意味が歪められているというお話をされていると思うので、吉野さんが解釈されている現代と古典(本来?)の違いなども伺いたいです。ご要望ありがとうございます。
>現代では商業目的で意味が歪められているというお話をされている
そうですね、以前書いたことと重複すると思いますが、簡単に振り返ってみます。
まず最も分かりやすい「商業目的での占星術の歪み」は、太陽を自分自身と見て解釈することでしょう。
現代で西洋占星術を習う者は必ず、太陽サインが人の「基本性格」を表すのだと徹底的に教えられますね。
これは天文学の常識が天動説から地動説へ変わった時代に、占星術師たちが「占星術は天文学である」という看板を掲げ続けるために太陽中心主義へ転向したことが始まりだと思われます。
経済発展が目覚ましかったアメリカで、商業誌が「太陽星座占い」を取り上げるようになってから一般にも浸透しました。
太陽星座占いは出生時間が分からなくても誰でも簡単に占えるため、大流行したようです。
小難しいために廃れる一方だった占星術が、この時代から「稼げるビジネス」に変わりました。
今も占星術が「ビジネス」として成立するためには、出生時間が分からなくても占える太陽にこだわらなくてはなりません。
だから、現代の占星術師たちが「出生図の太陽=その人自身」という話を本気で信じているかどうかは分かりませんが、否定する占星術師はいないはずです。(西洋占星術師は。否定したら自分の商売スペースとなる世界で、居場所を失うため)
――以上が「現代占星術は商業主義で歪められている」という話の基礎です。
ここまではけっこう有名な歴史事実なので、太陽中心主義を唱えた近代の占星術師たちの名や、アメリカで太陽星座占いを流行らせたジャーナリストの名を知りたい場合は専門書籍で調べてみてください。
ハウスについての話は、上の歴史に付いてくるものです。
もともと古典の占星術ではアセンダントサインが最も重視されていたことはご存知かと思います。
実際に古代では、アセンダントサインから始まる第1室を「容貌」ではなく「本人自身(国家など集団の場合も、その集団自身)」と解釈していたようです。
インドや中国など、古典のまま現代に伝わった占星術がそのように解釈していることから、西洋でも古代はアセンダントを本人・集団自身と見ていたことが推測されるわけです。
しかし外国にこのような痕跡が残っているにも関わらず、現代西洋占星術では、アセンダントサインを「他人からの印象・顔などの見た目」と決めつけるだけで本人自身とは決して解釈しません。
アセンダントサインは性格としては完全無視されます。
同じく、第1室も「自分自身」と呼ばれてはいますが、何故か性格などに関わるプライベートのハウスとしては読まれずに「他人に与える印象」として読まれる傾向があります。
これは上に書いた通りの理由で、現代占星術では太陽が「本人自身」でなければならないため、古典通りアセンダントサインや1室を「本人」として読むと矛盾してしまい困るからでしょう。
このような商業都合での解釈変更を、「歪み」と呼ばないで他に何と呼べばいいのか私には分かりません。
なお、他のハウスについては現代でも古代でも解釈はほぼ変わらないようです。
第12室だけ、古代人が「容貌」とも解釈していたことが大きな違いでしょうか。これは現代占星術師たちが第1室を「容貌」と読むことに決めたので、第12室から「容貌」の解釈を削除しなければ都合が悪かった、という感じでしょうか。
まるで昨今政界で話題の文書改ざんのようですね。笑
古典ハウス解釈の資料は中国の『七政』より。
すみません、参考にしたURLを失ってしまいましたが、ハウス解釈は当ブログこちらの記事にてメモしています。確か、ドラゴンヘッドの解釈として私が直したものです。
http://ksnovel-labo.com/blog-entry-402.html
分かりやすく現世の出来事として書き直すと、
1ハウス:自分自身、先天的な能力となります。
2ハウス:財産、収入、生存の糧
3ハウス:兄弟姉妹、幼馴染
4ハウス:家柄、家族
5ハウス:子供、娯楽
6ハウス:部下、病気、労務(苦役)
7ハウス:結婚、パートナー
8ハウス:遺産、死
9ハウス:旅行、外国
10ハウス:権力、成功
11ハウス:仲間、集団(広いコミュニティ)
12ハウス:容貌、隠遁(幽閉)、隠れた敵
古典だけが正しいわけではない
最後に込み入った話になりますが、私は「古典だけが絶対に正しい」と思っている者ではありません。
もし古典だけが正しいとするなら、インド占星術のようにサイデリアルで、土星までの惑星しか使わず、アスペクトは無視して惑星品位のみで占うべきです。実際、古代の占星術とはそのようなものです。
でも実際の鑑定でそれでは当たらないケースが多いと感じたので、私は太陽中心主義以外、近現代の占星術手法に従っています。
占星術は史料絶対の歴史学でも、教義に従う宗教でもないはず。
(これも過去記事と重複しますが)
過去の説を絶対信奉する必要はありません。また、絶対信奉すると誤ります。
何故なら古典にも誤った解釈があるはずだからです。もし誤っていると分かったなら修正していけば良いし、もっと当たる手法が出たら取り入れていけば良いのです。
ただ、手法を取り入れる場合はあくまでも「当たるかどうか」が基準になります。
新手の手法を次々に取り入れることが正しいわけでもないし、ヘリオセントリックや13星座占いのように現実天体に合わせれば必ず正しくなるというものでもないはず。
たぶん、占星術は言語学に最も近いものです。
人類の先輩方が天体という言語を使って何を表わそうとしているのか、手探りで読み解いていくしかないのだと思います。
(あるいは医学。既にある肉体という物を分析し、手探りで何が正しい治療法か探っていく)
しかしこの手探りの世界で一つだけ確かに言えることは、人間の地上社会の都合で歪めた解釈は必ず誤りであるということです。
結果に背き、自己都合で文書を改ざんするお役所仕事のようなことをすべきではないでしょう。
……と、長くなってしまいましたが、こんな感じで回答になりますでしょうか?
【20/5/29 占星術サイトでまとめました】 アセンダントは容貌を表さない! 古典で知る、ハウスの本当の意味
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